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さておき、デートの約束をした士郎は軽い足取りで自室に戻る。気分が昂ぶっていた。好きな人とデート出来るのだ、舞い上がらない方がどうかしている。それはセイバーにしても同じだったらしい。士郎のいなくなった自室で一人、ライオンのぬいぐるみを手に取り、ぎゅう、と力強く抱きしめながらくるくると回ったりしていた。ちなみにこの獅子のぬいぐるみ――シロウという名が付いているのは、持ち主であるセイバーだけの秘密だ。
そうして舞い上がった気持ちを抱えたまま、二人は日々を過ごす。
■■
士郎とセイバーが、ただただまったり怠惰休日を過ごす話です。
「―――剣よ、全力を解放せよ」
セイバーのその言葉に応じ、風が弾け飛ぶ音が甲高く響いた。押さえ込んでいた力が溢れ出し、周囲を行き場の無い暴風が渦を巻き始める。
次に来るのは夜闇を塗り替える程の閃光。
その輝きは鋭い形をしていた。闇も音も大気も全て切り裂かんとする意思に満ちた刃の形に。掲げたセイバーの剣が陽光を解き放っている。獣の雪崩に飲み込まれそうになっていた淡い輝きはもう其処には存在していない。
約束された勝利の剣。人の想念によって星製された“最強の幻想”。
■■
「Fate/hollow ataraxia」
セイバーのラストバトル部分を主軸とした短編SSです。
MOONGAZER企画・純情翡翠SSの投稿作品です。
翡翠と結ばれた志貴、だがその代償はあまりにも多すぎた。二人はある日遊園地に
出掛けるが、観覧車の中で二人が想うのは――
□
DDDD(でででで)
(5566)
(07-09-02 01:45)
要するにDDDの寸劇。
vol.2更新しました。
<サンプル>
がちゃん。
無言で電話の受話器を叩き切った。
春だからね。もうすぐ春だからね。ああいう輩が現れてもおかしくないと思うんだ。春だからね。あったかい季節だからね。うんうんそうだきっとそう。
後ろからカイエが不思議そうな顔をして訊ねてくる。
「誰からの電話だったの?」
「ああいや何でもない何でもない、あれだ、詐欺だ詐欺、今流行りの我我詐欺」
「ふうん?」
不信そうな目。そりゃそうか。
Fate/stay night.の士郎×セイバー(鞘剣)をメインとした短編SSになります。
数年前に「裸ワイシャツ合同誌」に寄贈したものをサルベージして掲載しました。なので、裸ワイシャツもののSSとなっております。
■サンプル■
「解った。甘いの好きなんだ……やっぱ、そういうとこ女の子だよな、セイバー」
言いながら、士郎は両手にマグカップを持って戻ってくる。
セイバーは手を伸ばしたが、湯気を立てるカップはそれを通り過ぎてテーブルに置かれた。その態度に軽くセイバーは眉を立てる。この出した手のやり場はどうすればいいのか。
ムッとしながらカップに手をやる――が。
「――熱っ」
「あ……大丈夫か、セイバーっ」
頷いて応える最中、士郎がカップを置いたのはこれを気遣ってのものだったのか、と今更のように気付く。
□
ROBOT MAN
(2207)
(06-10-01 20:09)
少し前の自分だったら、こんな思考を抱くことがまずありえなかったというのに。
このような余分な考えは切って捨てていたというのに。
ロボットのように。
血肉の破片まで冷徹な歯車で出来た機械のように。
だが、今の自分は切り捨てていたはずの思考に悩み、戸惑いを静かに覚えている。自分の内側からは螺旋や歯車とは異なる血液の循環によって生じる心音が聞こえている。それはかつての自分では聞こえなかったものだ。
自分は変わってしまったのだろうか。
自分は変わってしまったのだろう。
だとしたら、どうして変わってしまったのだろうか。
■■
無機質で無感動な葛木宗一郎について書いた短編SSです。
□
『金色の誇り』
(1441)
(04-04-11 03:13)
「べディヴィエールよ……王は、感情など無くて当然なのだ。そのことに、そなたが憤りを覚える必要は無い」
私は王の言葉を否定したかった。だが、王の言葉故に否定できなかった。その湧き上がった感情は、私の中で抑え切れない程に暴れ狂う。王は―――感情など無くて当然。では。彼は―――人としての彼は感情など無くて当然だというのか。
べディヴィエール系なSS
それ以外に説明のしようが無いSSです。
「で、結局は何をしているの?」
何となく解っていながらも、確認のために訊いた。
「ああ、それはね志貴――」
「それはですね、遠野くん――」
「兄さんに簡単に説明しますと――」
奈須きのこ先生爆誕記念SS。
きのこ先生の誕生日会の裏側でひっそりと行われた、女達の仁義無き味勝負……っぽい展開。
祝っているのかどうなのか、非常に疑問に思う点がありますが、そこらへんをご容赦いただけるとありがたいです。
場所:SS掲示板の誕生日SSツリーにて。
■
ある冬の話
(11033)
(03-12-17 18:03)
「シロウ。言いたいことがあるなら言って下さい。あなたはわたしのマスターです。サーヴァントに気兼ねする必要などありません」
「そ、そう? じゃあ、言うけど……」
ワザとらしく咳払いをし、大きく深呼吸。
やたら仰々しい態度だが、セイバーの凛とした表情に変化は無い。
「その……髪下ろすと、可愛いな」
ただそれだけの、冬の日の光景。
何気ないことを意識して書きました。
いつもの自分にしては短いです。読むのもあっと言う間です。
Fate発売前だということを御理解いただいてお読みください。
場所:「SSふろあー」にて。
月姫18禁フェチ企画『月にょ』 参加作品
暗闇の中でその身を封じられる狂えるシキ、その渇きは決して潤うことなく……
□
らふらふせいばー
(12252)
(04-07-23 11:51)
「で、衛宮君……折角の朝食を遮って、何を考えているのかナー?」
「ま、待て。話すからっ、首を絞めるなっ……」
「私からも説明をお願いいたします、シロウ」
「わかっ、二人して詰め寄る……く、苦しっ!」
顔色が変わってきた辺りでようやく息苦しさから開放される。だが、セイバーと凛に詰め寄られていることで、また先刻のものとは別の息苦しさを感じていた。
セイバーGOOD後を想定とし、笑顔を題材とした物語。
7/23:改訂版をアップしました。後半部分の展開を一部変更。
■
バレンタインもの
(9340)
(04-02-14 18:37)
厨房には何やらボールや金属の型入れ、へらなどが散乱してあり、その至る
所から、微香をくすぐる匂いが鼻腔を緩やかに刺激する。
散らばった道具、むせ返ると表現してもよい匂い。
それだけで、そこは戦場であったと彼女は確信する。
時代や様相、規模などは違えど、その本質は何かが戦った跡――あの茜色の
荒野に近い感慨を感じさせていた。
「……ふむ」
とりあえず、一つ頷く。
やはり考えることは自分と同じであったか、と彼女は納得。
西奏亭に頂きましたバレンタインデーSSです。
凛グッド後ではありますが、士郎×セイバー派のお方の作品故に……。
お楽しみください。
■
バレンタイン寸劇
(7689)
(05-02-15 01:17)
「ばれんたいん、ですか?」
朝食を終えた衛宮邸の厨房には二つの人影があった。一方は細やかで美しい金髪を一つに纏めた少女。もう一人は艶やかな黒髪を二房に纏め、背中まで伸ばした少女。ちなみに家主である少年は、生徒会の手伝いで早々に登校していた。
凛が投げかけた話題に、セイバーが小首を傾げる。
西奏亭への頂き物。
10=8さんの寸劇のバレンタインねたです。お楽しみください。
Fate セイバーTrueエンドアフターのSSです。
――――。
思考が風の音によって遮られた。
ざわめく葉が擦れ、幾重にも重なった警戒の波音を立てる。
近づく堕気は予想以上。鞘も失い、聖剣も部下に託し、傷だらけの肉体では
耐え切ることは不可能だ。このまま呑まれてしまうのか。
「案ずることは無い。この程度の堕気ならば、打ち砕く―――」
■
従者献身
(1932)
(03-11-30 10:37)
MOONGAZER企画・純情翡翠SSの投稿作品です。
志貴と翡翠の、幼き日の病の記憶が甦る……
■
暑中見舞い
(3709)
(04-08-04 06:38)
「しっかりしてください、兄さん。もっと遠野家の長男としての自覚をですね……」
「むう……暑いから仕方ないだろ」
「またそれですか―――確かに暑いです。ですが、空調が直るまでの辛抱でしょう」
遠野邸の空調に異常が確認されたのは今朝のことであった。常に心地よい涼しさに満たされていた屋敷であったが、今では外の庭園で風を浴びていた方がまだマシだというくらい。
とはいっても、外も暑いということには大差が無い。
西奏亭への頂き物、タイトル通りの暑中見舞いです。
内容と直接タイトルが関係なかったり。
秋葉が実に上手く描かれています。堪能してください。
■
期間限定
(4595)
(03-12-17 18:07)
雪見大福、ハーゲンダッツ、キムチ、スーパーカップ、ガリガリ君、キムチ、チョコモナカジャンボ、爽、キムチ、モナ王、スーパーカップ、キムチ………。
「アイスアイスキムチ、アイスアイスキムチって、意味解んないしっ!」
「いや、キムチが安かったからつい……」
バツが悪そうに幹也。
ほのぼのとか銘打ちつつ、どっちかというとイチャイチャなお話かもしれません。スーパーカップヨーグルト味復帰を願うあまりに書いた作品です。
場所:「SSふろあー」にて
そもそも、未来視を都合のいいものと考えていたのが間違いだったのかもしれない。本人の望む、望まないに関わらず視えてしまう未来だったが、望む未来が視えてもそれが自分と交錯するとは限らないもの。
未来は、意地悪だ。
誕生日だというのに―――逢いたい人にも逢わせてくれない。
瀬尾晶誕生日ということで、短めのSSを一本仕上げました。
そうそう、シリアスなお話でもないので、肩の力を抜いてのんびり読んで頂ければ嬉しいです。
場所:SS掲示板「瀬尾晶・誕生日書き込みツリー」
Moongazer企画・琥珀さんほのえろ参加寄稿作品です
春でも、夏でも、秋でもない。
冬にだけの特権。
その一時だけ、楽園となる絶対領域。
温域をもたらすモノ、それは火燵。
「うー、もしかして」
これが―――こたつの魔力というものなのか。
あまりの心地よさに、そこから抜け出すことすらも億劫になってしまうとい
う、人に怠慢と惰性を与える恐ろしき特性。面倒くさがりな者は、こたつに生
息を始めてしまうと言われているほどだ。
じんわりと脚全体を焦がすような温かさは、日向ぼっこをしているようでも
あり、冬の早朝の布団の中の気持ちよさを思わせる。
□
王様絶対命令遊戯
(10027)
(07-12-12 02:21)
数年前に寄贈した作品ですが、寄贈先のサイトが無くなっていたので、サルベージして自分のサイトに再掲載いたします。
■サンプル■
まず遠坂は絶対に王様にしてはいけない。人をからかって喜ぶような奴だ。他の面子ならばまだ良識を持ち合わせているだろうが、紅い悪魔は良識を持っていても容赦を知らないから性質が悪いとされている。
そして、運命の一言を呼ぶ引き金が、一同声を揃えることで引かれた。
「王様だーれだっ!?」
一斉に手の中に握り締めていた割り箸を確認。
俺の割り箸は3番。ということは遠坂が王様になる確率がここで生じた。
頼むから、他の奴が王様になってくれ――でないと死ぬかも。
□
雨と陽炎の幻
(17228)
(04-11-07 22:58)
ああ、そうか―――と、衛宮の言葉を聞きながら何となく理解する。
人を引っ張り込んで勝手にバス代払うのも、女の子に無理させないというのも、全ては衛宮にとっては当然のことなのだろう。つまり、そういうヤツなのだ、衛宮士郎という男の子は。
何だか、納得した。
「美綴……腕、痛いか?」
「ううん。大丈夫、丁度いい……」
「そっか。痛かったら離すから言ってくれよ」
「―――わかった。でも、このままでいいよ、衛宮……」
美綴綾子と衛宮士郎の話。
本編中のどのEDにも準拠しておりませんのであしからず。
■
雪月花
(2741)
(03-12-25 01:25)
それは一週間前。
「来週は何の日か知っている、志貴?」
「ん、ああ勿論」
彼女が軽く微笑みながら、促す。
言ってみて、と。
「―――クリスマス当日だろ」
「……………」
あれ、怒ってる?
遠野志貴とアルクェイドの迎えるクリスマス。
これといって特別なことは何も無い。でも、二人には特別であろう一日。そんな何気ないよーな物語。
短いのでサクサク読めます。
場所:SS掲示板より
■
面影の泉
(1361)
(03-08-08 13:14)
月姫18禁企画『月にょ』参加作品
幼い日に共に遠野家の庭で遊んだ秋葉と志貴。
そんな思い出の中の忘れられない情景……おもらしをしてしまった秋葉に、志貴は……
□
風と綿毛と蒲公英と
(3290)
(04-04-08 00:32)
「わからないよ……シロウ」
何で大切な人がいなくなったのに笑えるの、シロウ?
私が死んでも、シロウは変わらずに笑っているの?
セイバーがいなくなって。未練も何にもなくなって。セイバーのことがどうでもよくなってしまったのだろうか。誰かの為にしか笑えないのならば、もういないセイバーの為には笑えないのだろうか。
だとすれば、私もセイバーと同じように、死んでしまっても笑ってすらもらえないのかもしれない。
そして、そのまま俯いて。
セイバーED後のSSです。
イリヤの感傷。それを揺さぶる士郎の笑顔。何故、士郎は大切な人と別離していながらも笑っていられるのか。
といった具合の内容。
■
Anemone
(7334)
(04-03-31 06:22)
そこで、ようやく思い出す。
彼女の存在を。
忘れるはずもない。自分にとって、彼女がどれほど特別なのか語りきれない
ほどに、大きなものとして存在している。
ゆったりとした足どりで寄ってくる彼女。
改めて彼女へと向き直り、そっと微笑みながら頬を撫でるように手を伸ばす。
「――――セイバー」
だが。
穏やかな声とは裏腹に、指先はそっと彼女の身体をすり抜け、そのまま彼の
身体を文字通り通り抜けていった。
まるで、夢か幻のごとく。
西奏亭への頂き物(というか、強引に頂いて……)作品です。
アーチャーとセイバーの再会のお話。
独特の設定を綺麗に描かれています。