□ ユメモノガタリ。 その2 (7515) (08-04-07 00:49)
桜も散ってしまった春に始まった夢みたいな日常のお話。
――――――
「なんだ、照れてるのか? コクトー」
「て、照れてなんか居ません」
動揺に、何故か敬語になる僕だった。そんな僕の様子が心底楽しいのか、織はにこにこと屈託無く笑う。
「やっぱりコクトーは面白いな」
「あのね。からかわないでよ」
「嫌だ。からかう」
「……あのね」
「よし。楽しいから新婚さんごっこしよう」
「へ?」
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桜も散ってしまった春に始まった夢みたいな日常のお話。
――――――
「なんだ、照れてるのか? コクトー」
「て、照れてなんか居ません」
動揺に、何故か敬語になる僕だった。そんな僕の様子が心底楽しいのか、織はにこにこと屈託無く笑う。
「やっぱりコクトーは面白いな」
「あのね。からかわないでよ」
「嫌だ。からかう」
「……あのね」
「よし。楽しいから新婚さんごっこしよう」
「へ?」
ある夏の日に、幹也の死を予言した少女は彼と再び出会う。
瀬尾静音ちゃんと幹也の再会のお話です。
――――――
「黒桐さん、その、目……」
信じたくなくて、「見えていないのか」、と言葉に出来なかった私の問い掛けに。
黒桐さんは、一瞬だけ考えるような目をしてから、それでも静かに首を縦に振る。
ドラマCD「ALL AROUND TYPE-MOON」後の小ネタ。
ドラマCDのネタバレありますのでご注意下さい。
―――――――――
「弱いっ! 弱すぎるぜ、幹也っち!
上目遣いで「お願い」って、言われただけで撃沈とは!
そいつはあまりに惚気過ぎってもんじゃ、ありますまいかっ!」
「う、うるさいっ」
どうやらこいつ、一部始終を覗き見ていたらしい。
式が習い事をしている、と知った鮮花と橙子の反応は。
ドラマCDの内容にちょっと触発された小ネタです。
――――――――――――
「式が習い事……ですか?」
『伽藍の堂』の事務所の中で、コーヒーを飲みながらの休憩中、
僕が何気なく口にした言葉に、鮮花がきょとんとした表情で小首を傾げた。
「そう言えば、式って『一応』お嬢様なんですよね。一応。
普段が普段ですから、そんな事忘れてましたけれど」
お正月の伽藍の堂の面々のお話です。
正月ぐらいは実家に帰れと、鮮花に言われた黒桐は。
――――――
「もう兄さんもいい加減仲直りして下さいね。
別に是が非でも帰れ、っていうつもりはないですけど、せめてお正月ぐらいは」
「帰るよ」
「家族が顔を揃え……え?」
鮮花の抗議の声を遮って、僕が告げた台詞。
その言葉に、鮮花はきょとんと目を開いて、しばし言葉を失っていた。
伽藍の堂の面々の、騒々しい日常の一コマです。
―――――――――
「これ、やっぱり魔法の品なんですか? 所長」
「まあね―――っと、そう露骨に顔をしかめるな黒桐。
別に危険な品、という訳でもないんだから」
橙子さんが魔法の品、なんて持ち出してろくな目にあったことがない僕は、
どうやら自然と顔をしかめていたらしい。
伽藍の堂での七夕の日のお話です。
――――――
「……笹?」
「あと短冊もあるみたいだけど」
そう、それは白い布で軽く包まれた一本の笹の枝と短冊。
あげく、ご丁寧に筆まで用意してあった。
「なんでこんなものがここに」
「……」
あまりのタイミングの良さに、橙子の顔が頭をよぎる。
が、その疑いを打ち消すように幹也の言葉が重なった。
Fate/hollow ataraxiaのSSです。
本編終了後、カレンに呼び出された士郎は。
―――――――――
「そうですね」
俺の問い掛けに、カレンは考え込むように暫し目を閉じてから。
「……あなたから話したいことはないのですか?」
「…………はい?」
なんて予想外の返答を、少し困ったような表情で返してきた。
それは、まるで自分から話すことはなにもないというような態度で。
Fate/stay night のいわゆる鉄の心END後のお話です。
メルブラの内容が絡みますので、要注意です。
――――――
「いいわ。わざわざこんな所にまで、出向いてくれたんだし、
答えるのが礼儀でしょう」
くすり、とまた、からかうように小さく笑って、赤い魔術師は誇るように告げた。
「この村を滅ぼした理由はね。ただの食事よ。
だって―――吸血鬼が、血を吸うのは当たり前でしょう?」
告げる彼女の足下に転がる、投げ捨てられた誰かの死骸。
その細い首筋から流れ出る命の名残が、冬に凍る北の大地を赤く赤く染めていた。
はだわい3.に寄稿させて頂いた作品です。
仕事で忙しそうな幹也と、それに不満げな式に。
――――――
「倦怠期じゃないのか。お前達?」
伽藍の堂という名前よろしく、ガランとした事務所。
その主であるトウコは、雑誌らしきモノの頁を繰りながら独り言のようにそう言った。
真実を知ってなお、戦いを続けるバゼットに
アヴェンジャーが思うこと。
――――――
その全てを受けて止めて、バゼット・フラガ・マクレミッツは
聖杯戦争を続けるといい、その夜を去った。
その言葉に、なお、変わりはないか。
そう問い掛ける言葉に。
「―――、始めます。
あなたは私の指示に従いなさ。サーヴァント」
感情を消した声で、マスターは終わらない聖杯戦争の、再開を告げた。
そして物語は幕を下ろして。
───
「それより、戻れないとかいいませんでしたか……?」
聞き違いであって欲しいと願いながらの質問は、
「なんだ、聞こえていたのか」
なんていう平然とした蒼崎さんの言葉に、あっさりと肯定された。
「そ、それって、まさか、ひょっとしてずっとこのまま……?」
「Fate / hollow atraxcia」のSSです。
本編終了後のSSになるため、多大なネタばれ要素を含みますのでご注意下さい。
事件が終わった後、バゼットが出会う日常の物語です。
冬を迎えたある日。幹也の問いに対する式の答は
――――――
「それで、式。結局、何処の大学を受けるの?
いい加減教えてくれてもいいんじゃないかな」
紅葉の季節が過ぎ去って、空からは時折、白いものが降るようになった頃。
幹也は今までに何度も繰り返してきたその問いを、また私に向かって投げかけた。
幹也の部屋に、食卓代わりに置かれた机。
その上に参考書を放り投げると、私は呆れた気持ちで隣に座る男の顔を見上げて、息をついた。
「……そんなの。勝手に調べればいいだろ」
Fate/hollow ataraxia(体験版)の設定を使った小ネタSSです。
ライダーの部屋を尋ねた士郎が見たモノは。
―――
「―――どうぞ。鍵はかかっていません」
ドアの向こうから凛とした声で帰ってきたライダーの返事を確認して、
俺は静かにそのドアを押し開けた。
「お邪魔します―――って、あれ?」
開いたドアの向こうにある見慣れた部屋の光景。
その中にあったのは、いつものように本に視線を落としたライダーの姿と……
メルブラReActSSです。
さつきに対して、問題点を突きつけるシオン。
そして、それを自覚させるべく彼女がとった行動は。
―――――――――
「―――ほう」
ぴしゃり、と。
指示棒で壁を叩きながら、シオンは穏やかな―――それでいて剣呑さの香る笑みを、目元に浮かべた。
「なるほど。それは興味深い意見ですね。さつき」
「え?」
「つまり、志貴と一緒の屋敷に住んでいれば、
接触時間を稼ぐことは容易い―――と。そう主張するわけですね。あなたは」
空の境界+メルブラSSです。
伽藍の堂を訪れたシオン。その彼女の目的は。
―――――――――
「……時計塔の出身にしては、アトラスの歴史には明るいのですね、蒼崎」
「そうでもないさ。あんなものは常識の範疇だ、
彷徨海の連中だって知っているよ。そんなことより―――」
私の言葉を軽くあしらって、そんなことより、と彼女は更に視線を強めた。
「私の身内に、おかしな真似はしていないだろうね―――吸血鬼」
少し遅れてしまったバレンタインのお話です。
――――――
「あの、式……?」
「あのさ、幹也」
恐る恐ると口をひらく僕の言葉を遮って、
式は左手で軽くナイフの柄を指弾きながら、小さく笑って、訊いた。
「これ、誰から?」、と。
聖杯戦争の始まりの魔術師達の一幕です。若いときの臓硯とか。
――――――
「……話は、それだけか」
青と銀の衣装に身を飾った少女。
彼女を見つめるマキリ臓硯の眼が、昏い理性と警戒の色を帯びた。
目の前の存在を舐めるような視線に、もはや微塵の隙もない。
そう。惚けて眺めていて良い相手ではないのだ。
『冬の聖女』。
ホムンクルスでありながら大魔道士としての尊称を帯びる怪物。
それが目の前に立つ少女の正体である。
アルクTrueEND後のお話です。
互いを夢見る二人に訪れたのは。
―――――――――
「無事なのか? 無事なんだな?! あいつ! そうなんだな?」
「いいえ、無事じゃないわ。彼女はもうお終い」
手荒く体を揺すられながら、平然たる口調で彼女はそう告げた。
「―――っ、な」
「そんなこと―――あなたは、知っているはずでしょう? 遠野志貴君」
冷たさも、暖かさも。嘲笑も、同情もない。
一切の意図のこめられていない言葉は、それだけに、どうしようもなく絶望を語る。
UBW後のお話。
士郎と一緒に切嗣のお墓参りを計画していた凛だが―――。
――――――――――――
でも、聞かなきゃダメだという意志に押されて、
わたしは静かに問いかけを口にした。
「……切嗣さんって、どんな人だったの?」
「―――」
問い掛けに、士郎が僅かに息を呑んだのが伝わった。
それを隠すように、彼は苦笑めいた笑いを浮かべる。
メルブラReActSSです。
事件のご褒美を、さつきに上げたいシオンとレンは。
―――――――――
その黒猫の動作に、くすり、とシオンは笑みを溢して頷いた。
「そうですね。その方が賢明でしょう。
……まったく、さつきの言いぐさではありませんが―――」。
そして彼女は月を見上げ、
「―――おかしなことになったものです」
いわゆる鉄の心END後のワンシーンです。
士郎と言峰の対峙と、一つの終わりの光景。
――――――
「───だから、衛宮士郎。
間桐桜を見捨てたお前の正義は、
かならず切嗣の正義と同じ末路に墜ちる」
つまり。
―――お前には、何も救えはしないのだ、と。
FateEND後のイリヤと士郎のお話です。
もう、イリヤに余命が残されていないことを知った士郎は。
―――――――――
「一人で死ぬのは、嫌だから。
だから───ね、シロウ。一緒に、死んでくれないかな?」
メルブラRe・ActSSです。
さつきとレンのちょっとしたお話です。
―――――――――
「……猫?」
暗闇さえ真昼の如くに捉える吸血鬼の眼でなければ見落としかねない程に、
夜の闇に溶け込んだ黒猫が一匹、不思議そうな瞳で彼女を見上げていた。
「こんばんは、黒猫さん。
お散歩中なのかな?」
───リン。
また一つ鈴の音。