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Displaying all 11 Item

千鳥を踏んで (6605) (05-09-06 05:40)

桜トゥルーエンド後日談。お酒に纏わる幾つかの出来事。

「サクラ、今日は土曜日でお休みです。まだ陽の高い内からのんびりと杯を傾ける。これが休日の醍醐味という物でしょう」
 緩んだ笑顔で飄々と返す年中有休の同居人。

 ……加えて最近はライダーの傍らに、唾を飲み込むとらも一匹、よく見受けられる様になった。それでも流石に職業意識みたいなものは一応備えている様で、桜の居る前では要求してはこない。
 居る前では。

 ……いつかの言葉を思い出す。
 宝石の眼の彼女が曰く、サーヴァントはそのマスターに似るのだと―――

 『西奏亭』様にお預かり頂いております。

手を合わせて (3851) (05-05-06 23:35)

_http://www5d.biglobe.ne.jp/~sini/  (archive)   作者:うづきじん
Fate/stay night>ほのぼの | セイバー ライダー

桜トゥルーエンド閑話。
ライダーさんがおうさまを駆ったり、おうさまに駆られたり。

 この国の冬はとみに寒い。陽が香る布団の抱擁は、確かに離れ難く魅力的なものではあったけど。
 それでもやはり、日がな一日炬燵を駆るライダーなど、他に居はしないだろう。
 ……これがむしろ、私の堕落にその因を見出せるのなら、話は簡単だったのだけど。

 夢を見る。
 それは昏い暗い杯の下で。
 遥か上から零れる淡い光に照らされた、黒の少女の夢―――

 『西奏亭』様にお預かり頂いております。

杯浸す桜酒 (4685) (04-07-08 00:06)

凛バッドエンド後日談。
いきのこるのはただひとくみ。彼が脱落して後も、その戦いは終わらない。

 恐らく、きっと。逃げることすら出来はしない。身を翻したその瞬間に、あの石くれは遠坂凛を肉塊へと変えるだろう。
 ……それなら、せめて。最期の最後まで、こいつの隣に。
「―――らしくないな、凛」

「……甘く、見てたよなあ」
 桜と一つの屋根の下。
 その日常の甘美さは、予想の内ほど甘くはなくて―――

不器用な姉 (12715) (04-05-24 01:29)

桜トゥルーエンド閑話。アンリ・マユ以後、蒼崎橙子以前。

 眠りは浅かったのか、むずがる様な声を少女が上げる。
 慌てて手を離し。その睫毛が震え、ゆっくりと眼を開いて。
「―――あ。おはよう、ライダー」
「―――おはようございます、士郎」
 まだどこかぼんやりとした、寝起きの少女に挨拶を返した。

 その、心細げな涙目は妙に保護欲を刺激する。気付かれぬ様、僅かに抱きしめる力を込める。
 暖かく、柔らかな感触が彩度を増した。
 ―――役得と、言うのだろうか。こういうのも。

 加筆修正の上、『西奏亭』様にお預かり頂いております。

病臥に惑う (10254) (04-05-13 01:47)

凛グッドエンド後日談。
 夢見るおひめさまと、苦悩するおうさま。

 ―――その匙を見て、ふと思った。これなら或いは、もしかして。
 差し出される茶碗。伸びだしそうな手を抑え、視線を合わせず俯いて。
『―――桜?』
『……先輩。腕に力が、入りません』

 ……どうかすると、最近は埒も無い思いが頭をよぎる事さえある。朝から晩まで弛み切り、縦に横にと転がる毎日。愛しい人は傍らに。望みがあれば叶えてくれて、出て来る料理は芸術の域で。
 ―――これこそ、真に王の暮らしなのではなかろうか、と。

 懐剣は何より胸に近く在る、と言う話。

 加筆修正の上、『西奏亭』様にお預かり頂いております。

小春の日和、甘苦し (7783) (04-05-13 01:36)

_http://www5d.biglobe.ne.jp/~sini/  (archive)   作者:うづきじん
Fate/stay night>ほのぼの | 三人娘 リーズリット・セラ

セイバーエンド後日談。
 (『スウィートビター・メイプルシロップ』改題)
 その日少女は、街往く中で珍しいものを目に留めた。

「……甘いもの、嫌いって言ってたけど」
 指先に付いた餡子を舐め取る。あれから仲良く二匹づつ、袋の中身を片付けて。
「気に入ってもらえて、良かった」
 にやにやと―――自覚はしてるが、抑えられなかった―――彼女を見やる。熱いお茶缶を握り締め、恥ずかしそうに俯く彼女。
 クール・ビューティーな外人さんが、三口で鯛焼きを片付ける姿と言うのも。中々見れない、観物だった。
「……その。美味しかったもので」

 加筆修正の上、『西奏亭』様にお預かり頂いております。

胸中、穏やかならず (17921) (04-05-07 08:18)

セイバーエンド後日談。
 ぶるぶるとふるえてゴーゴー。

「桜さんなら大丈夫だと思うよ。料理も上手いし、綺麗だし。……大きいし」
「……はい」
 最後の言葉に、思い出してしまう。誉めてくれるのは嬉しいのだけど。
 ―――三枝先輩。
 上には上が、いるんです。

「ところでイリヤ」
「なに?」
「料理に一番重要なもの。何か分かる?」

 七センチの憂鬱。



 ※こちらの投稿掲示版に掲載されていたものを見直し頂いた上で、西奏亭に
 転載致しております(うづきじんさんの部屋に掲載)

りずせら (10560) (04-05-07 08:17)

セイバーエンド後日談。
 時に同じくして想いは暴走する、という話。


「私たちは人間じゃない。軽々しく人の街に降りて行って、もし何かあったら」
「……イリヤにせがまれて、ケーキ買わせに行かせた癖に」

「セラ。イリヤの為」
 まほうの呪文を唱える。

『―――だから。理想は理想として、それとは別に。現実に伴侶がいても良いと思うの』

『あ、シロウが望むのなら逆でも良いよ。私が人形になってあげる。可愛がってくれるのならね』

 ―――ようこそ。エミヤシロウ。


   
 ※こちらの投稿掲示版に掲載されていたものを見直し頂いた上で、西奏亭に
 転載致しております(うづきじんさんの部屋に掲載)

慎ましやかに桜呼ぶ (10034) (04-05-07 08:16)

_http://www5d.biglobe.ne.jp/~sini/  (archive)   作者:うづきじん
Fate/stay night>ほのぼの | 短編読切 間桐慎二 ライダー

桜トゥルーエンド異聞。
 マテリアル以外に救いの無い、彼の物語。


「……やあ、久しぶりだね。ライダー」
 高いだけでひ弱な体躯。涼し気に見えて卑屈な眼。器用にも増長と劣等感とを混合させた、その口調。
 頭の先から爪の先まで、一から十まで気に障る。
「お久しぶりです、シンジ。覚悟は良いですか」
 これだけ大きい屋敷なら、きっと悲鳴は漏れないだろう。
「ちょ、ちょっと待」
 取り敢えず。死なない程度に、自慢のすかし面を一発殴りつけてみた。



 ※こちらの投稿掲示版に掲載されていたものを見直し頂いた上で、西奏亭に
 転載致しております(うづきじんさんの部屋に掲載)

甘味に咽る (9537) (04-05-07 08:14)

_http://www5d.biglobe.ne.jp/~sini/  (archive)   作者:うづきじん
Fate/stay night>ほのぼの | 短編読切 セイバー 三人娘

凛グッドエンド後日談。
 小春日和の昼下がり、平和な休日の一幕。


 悲しげに、何も乗っていない皿を見つめる少女。
 どこか微笑ましい光景に、口元がほころんで。
「モンブランとアメリカン。―――二つずつ」
 財布の紐も、綻んだ。
「良かったら、どうぞ」
 少女は。信じられないものを見る顔で、こちらを呆と睨みつけ。
「―――カネ。貴女は、良い人だ」
「……それはどうも」


 一介の女学生が騎士王と(で)遊ぶ話。

 
 ※こちらの投稿掲示版に掲載されていたものを見直し頂いた上で、西奏亭に
 転載致しております(うづきじんさんの部屋に掲載)

紫の桜、茜の柳 (9464) (04-02-24 02:44)

 ……何かおかしな事を言っただろうか?心の内で首を捻る。確かにあの二人
は良くつるんでいるらしいが。変人同士気が合うのだろう。
「知らんのか?―――いやまあ、或る意味その方が健全なのだろうが」
 あ、本当に珍しい。『何かを言い淀む』美綴綾子の姿なんて、『怒りに我を
忘れる』間桐桜くらいにはレアだ。と言うか、初めてかも。
「知らないって何が。あいつらが相思相愛だとでも言いたいわけ?」
 軽口を返す。
 ―――と。綾子は、眉を顰めてこちらを見返してきた。
「何だ、知ってるんじゃないか。人が悪いぞ、遠坂」


 セイバーE後の日常、多数キャラを活き活きと描く手腕が素晴らしいです。 西奏亭への頂き物