全自動月姫Links-Albatoross-の登録データを、検索可能な形で提供します。(archive) (geolog) と記載のあるところは、外部のアーカイブサービスに接続します。簡易なリンクチェックでNGなサイトには、"□"や"X"が表示されます。
Displaying all 9 Item
肩口から滑らせた黒髪が脇に置かれた紅茶に漬かりかけて、翡翠は慌てて手を伸ばした。
長い髪というのは外出時や入浴時に手間になるものだが、食事時にも油断ならないものなのだ。
「ご、ごめん翡翠。ありがとう」
「いえ。やはりわたしが取りましょうか?」
「……大丈夫。今度こそ大丈夫」
志貴は長い髪が脇に置かれた紅茶の中に入らないように気遣いながら三度大皿に手を伸ばす。手元の小皿にふた切れほどのサンドウィッチを運ぶのを見届けてから、では自分もと翡翠はサンドウィッチに手を伸ばした。
「いや、翡翠さんはいい娘ですねぇ」
「んふふふ。そうでしょう、なにしろ自慢の妹ですから」
「……っ……」
不吉な想像をする。
弓塚さつきが、真っ赤な血溜まりに沈んでいる光景だ。
自分以外の役者は要らぬ、どうせなら己を彩れとばかりにぶちまけた臓物の中で、蹲り、笑い、泣き、哄笑を上げ、悲哀に咽び、愉悦に身を震わせ、悔恨に慟哭するその姿。
劇というには聊か生臭く、現実離れしている。しかし、それを笑い飛ばせない。黙って観賞しているには、昨夜の弓塚さつきの姿は鮮烈で悲壮に過ぎる。
「……こ、のッ」
□
都古の夏、輝く夏
(6445)
(03-09-01 22:10)
二人の間に横たわる真夏の空気をかき分けて、触れ合った。
触れ合った。
唇と唇がふれ合わさった。
「―――――――――――――――」
通じ合った喉の奥から息をのむ感触が伝わってくる。
唇の先端が重なり合い、お互いの体温が粘膜から伝わってくる。
目を閉じる事もせず、脱力した状態で至近距離で見開かれた兄の瞳の奥をみつめた。
志貴と唇を合わせている。
頬を合わせるよりも官能的で、兄弟のじゃれあいとは明らかに一線を画した行為。
「……ん…ぅ………」
漏れ聴こえる吐息が自分のものかもわからないほどの一体感に、涙腺が崩れそうだった。
□
遺伝
(1240)
(03-06-21 22:31)
月の輝く夜に
黄泉路に迷う貴女に捧ぐ
月の満潮は遠く深く
今はただ、今の幸せを噛み締めよう
それが望み。それが願い。
それこそが幸福。
□
弓塚さつき異伝
(1548)
(03-05-25 23:22)
「……弓塚……さん」
「その、こんな夜中でごめんね。っでもこういう時間じゃないと、ちゃんと現れられなくってさ」
ぱたぱたと頭の左右で髪が揺れ動く。彼女自身も慌てているのか、身振り手振りを加えてなにかを表現しようとしている。完全に思考停止状態に追い込まれてしまった俺と違い、なにか明確な意思がそこに感じられた。どちらにせよ、双方の間でまったく意思の疎通が出来ない状態に陥っているので、なにがなんだかわからないという表現を用いるしかない。
――――わからない。
―――――嗚呼
なんて、無様。
………………眼鏡、ふんズけちまったよ
リクとして書かせていただきました。
―――――――――――――――――――――――――――
……っ こっちクル、こっちくるっ。
ばたばたと階段を駆け上がり、隙間だらけの手すりに隠れたところで秋葉がロビーに姿を表した。
どこか不満げで、それでいて良いことでもあったかのような表情で悠々と歩いていく妹は、なんというか、コワい。
本来なら美しいと賞賛する黒髪が、いまは不吉を運んでくる翼のようにばっばっさと翻っているような気さえする。
□
紅い赤い朱い、
(2107)
(03-03-13 21:06)
秋霜亭の師走さんより頂きました。
一回目に読んだ時と二回目に読んだ時に、内容が随分違って見えるお話です。
――――――――紅い赤い朱い、緋色の躯に詰った肉を貪りたい
■
ネコ達の昼下がり
(3582)
(03-02-04 04:15)
投稿として師走さんから戴きました。
まったりしたい人は是非読んでください〜
―――――――――――――――――――――――――
結局はなにをするでもなく、部屋でごろごろしながらアルクェイドの提案する遊びを片端から斬っていた。
それもそろそろ限界みたいだ。
「どっかって、どこに行くんだ?」
「だから、どっか。 公園でもいいから、行こう」