□ 「IBRU」 (3329) (08-08-24 03:24)
英雄王とエンキドウの過去話です。ウルクでのある日の出来事。短編・ややシリアス。中編です。
中盤に残酷な描写が含まれますので、苦手な方はご注意を。
<以下本文より>
楽の音はいつの間にか止んでいた。奴隷達が下がった部屋は、先ほどまでの華やかさが嘘のように閑散としていた。入り口には分厚い布が掛けられて一切の光を遮っている。
外界と隔絶された場は、音すら入り込まずに奇妙にしんと静まり返っていた。卓のあちこちに灯りとして置かれた小さな篝火が、暗い部屋の中を仄かに赤く浮き上がらせている。壁に映し出された人影がまるで昔話に出てくる人を食う悪魔のように、炎の揺らめきに逢わせて背後で不気味に踊っていた。