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定期試験の後
(2896)
(03-09-23 00:06)
ふと、顔を上げた。
答案用紙を眺めている間、秋葉が黙ったままだったのがなんだか気に掛かっ
ていた。
もしかして、秋葉としてはこの点数でも不本意なのかな。
満点以外は意味がありません、とか言い出してもおかしくない。
だが、予期に反した姿が、視界に入った。
妙にもじもじとしている姿。
何とも言い難い、珍しい姿。
秋葉の試験結果を見ての、兄妹の会話です。
一応、秋葉誕生日記念SS。
特に起伏のない日常ものが好きな方なら。
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収支決算
(771)
(03-08-24 00:22)
失ったもの。
これまでの私、これまでの過去。
今につながる過去との断絶。
それは喪失したのとは違うけれど、自分のものと感じられない。
ガラス越しに眺めるように。
紛い物を弄んでいるように。
知識としての記憶と、思い出との隔たり。
あたりまえに周りにある諸々への違和感。
断片。
有機的な繋がりの欠如。
つまりは自分が自分であるということへの不確かさ。
第4回人気投票の際の式応援SSの改訂版です。
目覚めてから今に至るまでに得た物、失った物。
そして、そのプラスマイナス。
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駆けつけて
(1802)
(03-08-24 00:19)
「兄さん……」
自分でも声がか細く掠れているのがわかる。
酷い声。
途切れそうで、震えて。
ううん、声だけでない。
きっと顔も酷い有り様だろう。
蒼白になって、涙の跡が無様で。
でも、そんな事はどうでもいい。
そんなつまらない事に関わっている暇はない。
第4回人気投票の際の秋葉応援SSを手直し掲載致しました。
怪我に倒れた志貴のもとへ駆けつけた秋葉。
その姿を見て……
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扇風機と黒猫と
(2945)
(03-08-13 00:24)
朝食の片づけが終わって、部屋で一休み。
一番ほっとするこの時間。
だけど、少し暑くて、ぼんやりとしてしまいます。
こんな時は、これ。
これで涼しくなりましょう。
そんなことをひとりでぶつぶつ言いながら、スイッチを入れます。
するとゆっくりと羽根が回り始めて、涼しい風を送ってきます。
そうして風に髪をなびかせていると、窓から一匹の黒猫が入ってきました。
秋月 修二さんへの暑中見舞でしたが、西奏亭にて代理掲載しています。
扇風機とレンという組み合せで書かれていて、猫好きの方にお勧めです。
橙子さんの説明の通り、このコーヒー機は非常に時間がかかる。
一滴一滴、ぽつり、ぽつり、としたたり落ちるので、とても、もどかしい。
普段インスタントしか飲まない身としてはなおさらだ。
(〜「時を刻む」)
昨日、珍しく定時であがれると、俺はまっすぐ橙子さんの事務所へと向かっ
た。
刑事って言うものは時間がいつ開けられるかわからないものだから、ちょっ
とでも暇があれば、俺は必ず彼女の元へと行くことにしている。
幹也のやつなんかは、「元気だね」などとほざいているが、こういうのは一
にも二にもまず根気なのだ。
(〜「独り身」)
のちさんの書かれた「空の境界」秋巳大輔刑事のお話二編。
水出しコーヒー、猫という題材を使ってのお話です。
権兵衛党さんへの暑中見舞でしたが、西奏亭にて代理掲載しています。
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機械式
(3178)
(03-09-24 00:14)
「ねぇ、コハクおばさま」
庭を掃き掃除していると、可愛らしいシキ様がやってこられた。
「なんですか、シキ様?」
可愛らしい笑顔に思わず微笑み返してしまいました。陽の光の中で、まるで天使のように微笑む。
「お母様もわたしと同じく紅い髪だったの?」 (...『機械式』)
大崎瑞香さんから西奏亭への寄贈作品です。
コハクとシキのオハナシです。
この独白形式で綴られる過去と現在のぞくりとする感覚……。
そう、わたしたちフタリはズレていたのです。二人でようやく一人なのです。他のヒトたちとは違い「コハク」と「ヒスイ」のフタリでようやくヒトリになれるのです。 (...「機戒式」)
そして、ヒスイの語る姉さんのお話へ。
ぜひ両方通して味わってみて下さい。
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まあるい、ビー玉
(1413)
(03-08-07 01:18)
蒼香の差し出した緑色の硝子瓶を手に持つ。
ひんやりとした感触が涼しげで、何とも心地よい。
それをそのまま、口に付けて、中身を飲もうとする。
けれど、そこからは予想されたようなものは出てこない。
それどころか、水滴ひとつ落ちてこない。
どうなっているのかしら、と口を離してそれを眺めていると、硝子瓶を通し
て蒼香が笑っている顔が見えた。
のちさんから暑中見舞いとして、西奏亭に頂きました。
夏らしい一情景で涼んで下さいませ。
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弟の境界線
(5187)
(03-07-27 00:16)
なんだろう。
暖かい。
これ……?
有間?
ああ。
有間だな。
あたしの胸に顔埋めるようにして……。
まだ眠っている。
ふふふ。
可愛いな。
ぎゅっとしてやろう。
……。
……?
……!
ゆっくりと寝ぼけた頭に、知覚したものが浸透した。
有間を抱き締めるようにして、眠っていた姿。
それを殴られたが如く認識した。
一子から見た、もう一人の弟的存在、志貴。でも……。
旧作改変企画の一つで「乾さんちのお姉さん」を元にしています。
いちおう全年齢向けです。……表は。
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孤独な色
(826)
(03-07-21 00:39)
喪服。
それは一種の独特の雰囲気を持つ服。
だから、普段着と一線を画していてもおかしくはない。
当然の事ながら、そんな服を見ている子どもはほとんどおらず、この一角に
は私と兄さんぐらいしか子どもはいなかった。
子どもの目線というのは、大人の目線とは違う。
高さが違うだけで、こんなにも印象が違うのかと疑うほどに。
両親が離れている間、私たちは黒い服に囲まれて、ただそれを見上げていた。
遠くから人の話し声や歩く音は聞こえていたけれど、まるで私たちだけがこ
の一角に閉じこめられたような錯覚を覚えていた。
そう、この世界には私と兄さんしかいないような、そんな錯覚に。
のちさんから西奏亭への頂き物です。
独特の雰囲気、小さい頃の兄妹の姿を味わってください。
*作者名間違い訂正いたしました。申し訳ありません。
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すれ違い
(1582)
(03-07-19 00:13)
ドアを開け、長椅子に座る。
肘掛の所が少し凹んでいる。床に長い傷が一本ある。どちらも、俺がやらか
したもの。
ここに来るようになって随分経ったし、何度もここで歓談を楽しんだりもし
ている。だからこそ、長い時間を過ごしていれば、ミスをすることもある。
そして、ミスが出来るくらいには、ここに馴染んでいる自分がいる。
そんな場所で、俺は朱鷺恵さんを待つ。
少し昔の志貴と朱鷺恵の情景。
雰囲気があります。
秋月さんから西奏亭への頂き物です。
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天抜き・死徒風味
(1482)
(03-07-17 00:12)
hitoroさん、権兵衛党さん、秋月 修二さんの実力三人の「天抜き」競作。
タイトル通り、死徒を題材にしていて、その数27。
そして……?
多彩な味わいをお楽しみ下さい。
作者名はいちばん多く書かれたhitoroさんで登録いたしました。
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シーツを替えて
(4959)
(03-07-05 00:14)
最後は志貴さまのお部屋。
どうして最後にしてしまうのだろう。
順番からすれば、最初でも良いのに。
入ります、志貴さま。
朝とは違う。
志貴さまのいない志貴さまのお部屋。
他の部屋とは違う。
志貴さまはいないけど、志貴さまを感じる。
志貴さまの匂いがする。
……。
何を考えているのだろう。
でも、志貴さまだ。
旧作改変企画SS第五弾です。『鬼の居ぬ間の』を題材にしています。
各部屋を廻る翡翠、そして……。
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憧憬
(4236)
(03-07-04 00:14)
「ごめんなさい。私も熱かったから今までシャワーを浴びてたんですよ。こん
な格好で失礼しますね?」
そう言って、笑いかける。
湯上がりの女性というものは、似たような動きをするものなのだろうか。
胸を押さえ、髪に手をやり、瞳を潤ませている。
そうする仕草、動作、立ち振る舞いがあの人を彷彿とさせる。
暗闇に浮かぶその姿も、よく似ている。
暗い空間に浮かぶ白い布をまとう姿はあの人を思い起こさせる。
そう、あの時の、あの人を。
志貴の思い出す、あの人。
眩しく目に映った年上の女(ひと)
西奏亭の60万HITのお祝いに頂きました。年上属性ある人は是非に。
■
午後降る雨の如く優しく
(2747)
(03-06-30 00:14)
「ねえ、お願い。
こんな事、シエルにしか頼めないし……」
「でも、ですね」
「何でもするから。
シエルが言う事何でも聞くから、だからお願いします」
何処で憶えたのだろう。
跪いて、さらに土下座をしようとする。
まじまじと見つめて、はっとして止める。
そんなアルクェイドを見たくはなかった。
「わかりました。わかりましたから、おやめなさい」
「じゃあ、してくれるの?」
「……ええ」
露骨に嫌な顔で、しかし同意する。
しかしアルクェイドの顔はぱっと輝く。
サイトの過去作品改変企画SSです。「ねこのめいろ」の某エピソード
を志貴視点→シエル視点に変えての一品です。
■
蛍光灯、揺れて
(2952)
(03-06-20 00:11)
「志貴さま……」
いつもの翡翠の声ではない。
さっきの怯えをそのままにした声。
「な、何?」
翡翠の体が、顔が近づく。
普段なら間違ってもありえない至近距離に翡翠を感じる。
何故?
硬直して動けない。
旧作改変リクエスト企画作品です。
がんさんのお題により『接触拒絶』を元に書いています。
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時重ね
(990)
(03-06-17 00:14)
素知らぬフリで私はカウントを続ける。
誰も知らないことだ。何故なら、知る必要すらないことだから。
自分勝手に作り上げた、私だけのルール。
達することが目的でもない、幼過ぎる戯れ。
一、二、三、四、五。
飽きもせず、何度も繰り返し数を重ねる。連ねる。織り上げる。
いつしかそれは高みへと。
最後にすべき数は心得ている。
だからそれまでに、何かしらの決着が欲しい。
秋月さんより西奏亭への寄贈SSで、前に頂いた「人想い一思いする重さ」に
連なるお話になっています。併せてぜひお読みください。
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夜ヲ巡ル少女
(1061)
(03-06-13 00:15)
別に勝ち誇ったようでもなく、今度はカソック姿の少女が口を開く。
その姿に相応しい、諭すような言葉。
決して高圧的ではなく、柔らかく促し同意を引き出すような物言い。
ベンチの少女はおとなしく耳を傾けている。
その様子を、もしも普段の二人のやり取りを知る者が見たのであれば、奇異
の念を抱いたかもしれない。
さらに金髪の少女が、反発することなく素直に頷いた事に対しても。
束の間二人の間に、共感さを交えた空気が生まれる。
数瞬の静寂。
サイトの旧作改変リクエスト企画で、「夜警」後半の名前や台詞を廃して
統一感を出す……といった意図で書き直しています。
基本的に「同じモノ」ですので、気が向きましたらどうぞ。
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たいむりみっと
(4040)
(03-06-07 23:11)
「了解。で、順番はどうする。3セットだろ、最初に全部決めとくか」
「そうね……、1セット終わる頃に次の順番を決めるのはどうかしら。くじ引
きか何かで。そちらの方が先が読めなくて面白いし。
その時夢中になっている4人目は参加できないけど、ズルはしないし承知し
て貰ってと言う事で」
「うん、それでいいと思うぞ、遠野」
「わたしも〜」
「わたしもそれでいいと思います」
「俺の意思は……」
「却下」
サイトの記念企画SSで、過去作品の改変リクを貰っての創作になっています。
これは「60分以内に志貴『が』四人『を』イカさないといけない『かうんと
だうん』」という権兵衛党さんのリクより。
非常に馬鹿な作品に仕上がっています。
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胸を熱くするような
(2748)
(03-05-28 00:31)
「……だって兄さんですもの」
恥ずかしそうに、でもはっきりと秋葉は答える。
志貴はくすりと笑う。
それでは答えになっていないなと思って。
そして普段とは違う、ためらう事無く自分に甘える妹の姿を眼にして。
50万ヒットのキリ番リク作品として書いております。
一応、「まったりとした秋葉ものきぼー。あえて二人だけに絞って限界
まで濃厚な愛欲話」を目指しはしたのですが。したのですが……。
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あねいもうと
(955)
(03-05-22 00:27)
MCさんより西奏亭への寄贈作品です。
「天抜き」28、29のあねおとうと、あねいもうとを元にしたDNMLです。
解説ページのアドレスなども記載してありますので、初めての方でも大丈夫だ
と思います。
ダウンロード&解凍してお楽しみください
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天抜き・西奏亭風味
(1664)
(03-05-19 05:06)
サイトのトップページに更新の度に載せている「絵の無い4コマ漫画」
というかショートコントというか、そういったモノです。短いです。
……な「天抜き」の、のちさんからの頂き物Verです。
中のタイトルが「兄さんではなくて」「キスキス大好き!」「猫影」
等々になっていて、過去のしにを作品を題材としています。
一風変わった作品群です。ご堪能ください。
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とおのをつぐもの
(2600)
(03-05-17 00:22)
「兄さん?考えたことがありますか?」
遠野秋葉は微かに微笑んでそう尋ねる。長い黒髪が垂らし、その人形のよう
に美しくも、どこか凛々しいところのある美貌がふっと柔らかくなり、硬い冬
の蕾が春に萌え出してきたかのような感じを受ける。
ティーソーサーを手に取り、静かに紅茶を飲みながらもその口元が笑みを形
作っていた。
阿羅本さんより、西奏亭50万HITのお祝いに頂きました。
秋葉の問いとは?
日常にぽかりと開いた穴といった味わいのお話です。
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人想い一思いする重さ
(1153)
(03-05-13 01:16)
「なあ……姉ちゃん」
「ん?」
「どうして、あそこに来たんだ?」
解らないなら、本人に確かめればいい。割と素直にその考えに行き着く。姉
ちゃんはどう答えたものか考えているのか、少々間を置く。
俺は湯船で体を強張らせて、耳を澄ましている。
答えは唐突に来た。
「何となく」
秋月 修二さんより西奏亭の50万HIT記念に頂きました。
少し昔の一子、そして有彦……、乾家の二人の情景を描いています。
雰囲気ある素敵な作品です。
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家族
(2878)
(03-05-04 02:10)
「人がいない時に変な話をしようとするからですよー」
「むー」
「……」
琥珀を睨む秋葉と翡翠。
ふと、思いついたように秋葉が琥珀に向かい合った。
「それなら、もっと寂しいのは琥珀の方じゃないの?」
「え……」
「そうよね、あれだけ愛し合っている二人だもの。一時も離れたくないでしょ
うねえ」
「あ、あの……」
あからさまに動揺する琥珀。
それを見て人の悪い笑みを浮かべて秋葉はたたみかける。
のちさんより西奏亭への寄贈作品です。
琥珀さんシナリオの後のお話。
志貴がふらりと旅立ち、残されている秋葉、翡翠、琥珀のお茶会。
俎上に上がる志貴の事、琥珀の事……。
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羽と猫
(3713)
(03-04-27 00:16)
「ん、よろしくね」
ニコニコと笑いあう二人。
ひとしきり手を握り合うと、どちらからともなくその手を離す。
「――じゃ、行こっか」
「……?」
唐突に言い出したあるくぇいどに、
羽居は今度は疑問で首を傾げた。
そんな彼女に、アルクェイドは告げる。
「志貴を探しに。
……手伝って、くれるでしょ?」
異色の取り合わせの二人の物語です。
何故か人気の無い夜の遠野家を探索する羽居とアルクェイド。
荒田 影さんより西奏亭への寄贈作品です。