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終わりて後の
(5427)
(04-04-22 00:21)
で、あるのに、唐突に志貴から発せられた言葉は、そんな二人の共有体験に
異を挟むようなものであった。
同じ言葉でも、志貴が違った態度であれば、秋葉はあっさりと一笑にふした
かもしれない。あるいは頬を膨らませ、軽く拗ねるような仕草を取ったかもし
れない。
しかし、今の志貴は、秋葉に不安をもたらせた。
志貴にしてからが、言い出し難そうな、内心の疑問を隠せども隠し切れぬ、
そんな表情をしていたから。
秋葉と志貴との交歓のひと時。
しかしその後で、志貴はある問いを口にする。
それは……。
終始ベッドの中のお話です。甘々。
■
蛍光灯、揺れて
(2952)
(03-06-20 00:11)
「志貴さま……」
いつもの翡翠の声ではない。
さっきの怯えをそのままにした声。
「な、何?」
翡翠の体が、顔が近づく。
普段なら間違ってもありえない至近距離に翡翠を感じる。
何故?
硬直して動けない。
旧作改変リクエスト企画作品です。
がんさんのお題により『接触拒絶』を元に書いています。
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試験期間を迎えて
(5014)
(04-12-16 01:57)
取りあえず終わりっと。
「あーあ」
伸びをすると、声が自然に洩れた。
少し肩がこっている。
「あ、終わったの?」
弾んだ声。
うーんと首を回しつつ、体を声の方に向ける。
志貴とアルクェイドの他愛ないやり取りです。
前に他所さまの同人誌に掲載していただいたものの再録です。
■
誕生日の贈り物
(4380)
(06-09-23 00:03)
九月二十二日。
その日は、遠野秋葉の誕生日である。
それを間近にして、兄である遠野志貴がプレゼントの相談を始めた。
となれば、話の行き先は明らかである。
新たな目で志貴を見つめる。
つまり、何をプレゼントしたらいいのか困って、相談しに来た訳ですね。
……といった秋葉誕生日記念SS。どうにか誕生日当日に滑り込みました。
単純に犬がいて、飼いたいと思ったから、それが理由。
志貴の希望に対し、屋敷の中であらゆる事柄に対しての決裁権を持つ秋葉、
志貴の妹にして遠野家の当主は反対をしなかった。
やや戸惑った顔をしたものの、兄さんがお望みならと同意をした。
生物としての本能的欲求は強いものの、モノへの執着が乏しい兄の希望であ
れば、遠野家のルールに抵触しない限りは秋葉は否定しない。むしろ望まれる
事を待っている。
淡々とした地味な日常モノです。合わせて文体などもちょっと変えたり。
■
降り注ぐ喜びに
(5013)
(04-02-09 00:37)
世界で二人だけになる事。
手を伸ばせば届く範囲だけで世界の全てが構築される事。
本来は似ているようでまったく違う事だった。
でも、今の志貴と秋葉にとっては自分達以外の全ては無意味となっていたし、
乱れるシーツの海だけが無限の広がりを持っていた。
志貴の中で秋葉以外の存在は、すっかり消え去っていた。
秋葉は志貴への感覚だけで、なにもかも満たされていた。
秋葉と志貴のお話です。
延々と、水音がしているような……。
かなり長いのと(70K程ですが)、内容が内容なので、頑張ってお読みください。
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「妹」&「被写体」
(1869)
(04-03-18 00:38)
通り過ぎる冷たい風のせいで息を白く吐き、肩を上下させながら、一所懸命
に歩いている。
意地っ張りな妹だから、合わせてくれなどと言うことはない。
黙って、不機嫌になりながら、顔を真っ赤にさせてついてくる。
それを見ずとも、俺にはわかる。
そんな秋葉の様子が。 (「妹」より)
秋葉を描いた二つのお話です。
短いですが、雰囲気が素晴らしくて、読み終わっての満足感があります。
西奏亭への頂き物です。
西奏亭への頂き物の掌編二作品です。
翡翠の台詞のみで構成されたお話、『ある喫茶店にて』
志貴の「あいつ」への思いを綴った『夢一夜』
書き方や内容は違いますが、ふわっと残る何かが印象深いです。
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万華鏡
(2857)
(05-03-29 00:43)
長く伸びた光の筋は、鏡に曲げられ閉じこめられて、幾重にも重なり世界を作る。
とても、幻想的な光景。
息を呑んで、だけど心躍らせて、その世界に引き込まれていく。
そんなふうにみとれていたのに、兄さんは疲れた声で水を差す。
「それでいいのか?」
なんて、愚鈍。
のちさんから西奏亭への頂き物です。短かくも秋葉と志貴の姿がよいです。
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憧憬
(4236)
(03-07-04 00:14)
「ごめんなさい。私も熱かったから今までシャワーを浴びてたんですよ。こん
な格好で失礼しますね?」
そう言って、笑いかける。
湯上がりの女性というものは、似たような動きをするものなのだろうか。
胸を押さえ、髪に手をやり、瞳を潤ませている。
そうする仕草、動作、立ち振る舞いがあの人を彷彿とさせる。
暗闇に浮かぶその姿も、よく似ている。
暗い空間に浮かぶ白い布をまとう姿はあの人を思い起こさせる。
そう、あの時の、あの人を。
志貴の思い出す、あの人。
眩しく目に映った年上の女(ひと)
西奏亭の60万HITのお祝いに頂きました。年上属性ある人は是非に。
■
色、混ざりて
(1877)
(04-04-06 04:37)
いつものように朝を起きると、琥珀が戸を叩く。
不思議なことに、琥珀は私が起きる時間を、予測出来るようなのだ。
ほとんど時間差無く、叩かれる音は、しかし、いつもよりも興奮気味だった。
「秋葉さま、外を見られましたか?」
そう、窓に映るのは、ちらほらと降り積もる雪。
比較的雪が多いこのあたりでも、こんなふうに積もるのは随分と久しぶりだ
ろう。
なにせ、昨夜はまったくと言っていいほどの快晴だったのだから。
雪の朝の遠野家の情景。
ちょっとした小道具を用いて、鮮やかに秋葉と志貴を描いています。
ぜひ味わってみて下さい。(西奏亭への頂きものです)
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酒精に漂う
(3135)
(04-04-06 03:56)
そうだ、酒を初めて呑んだのは、ここでだった。
唐突に思い出して、目を天井に彷徨わせて、少し、記憶を掘りおこす。
茫然とした顔で、盃を持ち上げたまま、俺は考えに耽る。
ああ、そういえば、秋葉が考え事する時にはちゃんとそういう顔をして下さ
いって、小言を言っていたっけ。
横からそんなことを思い出しながらも、俺は過去を振り返っていた。
酒という小道具を使っての、志貴と一子さんのお話です。
独特の語り口での、何ともいえない雰囲気が醸し出されています。
IFS (Ichiko Festa in Seisoutei) 実行委員会を通して西奏亭に
頂きました。
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Smoking
(2137)
(03-01-24 00:33)
丸い硝子製の器に煙草が剣山のように入っていた。
灰皿のついでに、たまっていた食器類を全て洗い、机の上を台ふきんで拭い
ていると、灰皿からこぼれたのか一本の吸い殻があった。
それを取ると、茶色の吸い口に、紅い、口紅がついていた。
志貴と一子との情景……、二人の距離感や漂う雰囲気を煙草という小道具を
使って巧く描かれています。一子さん好きはぜひどうぞ。
西奏亭の30万HIT記念として頂きました。
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お嬢様
(7190)
(04-12-24 03:02)
黄昏が宵闇にかわる時間、茜と群青が混じり合う空の下、私は兄さんと家路についた。
はじめてこうして二人で歩いた日は、もう既に思い出として整理され始める頃であり、そこを振り返ってみると私はずいぶんとぎくしゃくしていたと思う。
道案内するみたいく先導するのか、控え目に後ろにつくのか、それとも横にいた方が良いのか、右か左か、くっついていると妹らしくないか、離れすぎるのはもっと変ではないかと、何でもないふうを装っても、一挙手一投足に色々と考え込んで、ただ一緒に歩くのが私には簡単にできなかった。
志貴の言葉を気にする秋葉。そして部屋で……。
西奏亭への頂き物です。
■
酔花酔夢
(4336)
(03-10-03 00:12)
「どうかしたのかな、お姫様は?」
「――――!」
ああ、お姫様とはっ!
そんなの夢だとしても恥ずかしい。
私の怜悧な部分が嘲い、赤面させる。
けれど何と甘美な響きだろう。
感激が、何もかも洗い流してくれた。
兄さんとただ一人対になるのはお姫様である私だけ。
硝子の靴など必要もない運命の二人。
クラザメさんより西奏亭の二周年記念として頂きました。
とろとろに蕩けそうな志貴と秋葉の甘いお話です。
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刺激が、欲しい。
(5221)
(03-11-16 00:16)
そんな志貴の手を、秋葉は至って自然に掴むと
「行きましょう、兄さん?」
そう、にっこりと笑いかけた。
「? ……ああ、行こうか、秋葉」
久しぶりの事だったので一瞬意味がわからず、反応が遅れていた志貴だった
が、その言葉の意味を理解したらしく、すぐその顔に不敵な笑みが浮かびあが
った。
それは、普段なら秘密を共有するという、周りを欺いている愉悦であったり、
秋葉がまた求めてきてくれている満足感であったり。
しかし今回は、遂に来たか、という期待感によるものであった。
ミスヒテンさんから西奏亭への頂き物です。
学校での志貴と秋葉による禁断の行為。そしてそこにさらに……。
圧倒的な筆力で、長さを感じさせず読み進むことでしょう。凄いですよ。
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風邪に見舞えば
(3857)
(04-01-20 02:27)
「……どういうつもりだ、有間」
「風邪って人にウツすと治りが早いんですよ、イチゴさん」
怪訝な私の詰問にそう応じる有間。私は一つ溜め息をついた。
「今日はダルくて難しいコトを言われても考えられないんだ。クスリを飲んで
ゆっくり寝るよ、さあ」
そう言って再度手を伸ばすが、やはり有間は薬を渡す気はないらしい。
「……」
無言で見据える私を見ながら有間はベッドに片膝を付けた。
風邪に倒れた一子、訪ねて来た志貴。
西奏亭100万ヒット記念に利一さんより頂きました。
濃密です、凄いです。堪能しましょう。
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聖母の笑顔
(2884)
(04-01-20 02:24)
「有間。あたしに似合わない職業って何だと思う?」
ある日突然、本当に唐突に一子さんは俺に質問を投げかけてきた。
無人の乾家、そのリビングでのんびりしていたら、帰ってきたらしい一子さ
んがドアを開けるなりいきなりの質問。
確かに今まで有彦と『一子さんの職業って何だろう』ってあれこれ論じた事
があるけど、それを知って気を悪くしたのだろうか。
「?」
だが、そう言われてみると意外と難しい質問だった。
そして、志貴が選んだ職業は?
白と黒との一子さんの姿は?
西奏亭100万ヒット記念に古守久万さんより頂きました。
一子さんの素敵姿を堪能ください。
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冷たい瞳と――
(3033)
(04-01-18 00:17)
「――なんだ。有間、いたのか?」
水を飲もうとキッチンにいくと、そこに有間がいた。
いつものぼぉっとした感じの曖昧な笑み。黒縁眼鏡がさらに人当たりの良さを醸し出している。しかしその奥の瞳はいやに冷たい。
優しい輝きを湛えた冷酷な瞳。矛盾していたが、有間の瞳はそう表現するしかなかった。
西奏亭100万HITのお祝いに頂きました。
一子さんです。一子さん視点でのやりとり、心情、行為。
実に艶やかで、引き込まれます。年上好きならずともぜひ堪能下さい。
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刹那の風景
(2285)
(03-03-13 00:59)
どうしたんだい、いったい、と尋ねようとした時、
ちょこんと、膝の上に乗ったのだ。
突然の行為に驚いている俺を無視して、レンは頭をあずけてくる。
まるで安心して委ねるかのように――。
かかる重み。軽くて温かい、その重みに、つい――
まぁいいか、と俺も一度椅子に体をあずける。
息をそっと吐く。
そして見上げると、そこには広がる空。
群青色。
透き通るような蒼い空に雲がたなびいている。
しかしそれも東の空は暗くなりはじめ、ゆっくりと茜色にそまろうとしていた
瑞香さんが第四回人気投票支援SSとして投稿された作品の加筆訂正版です。
リクエストした縁で、厚かましくも西奏亭に頂戴いたしました。
レンと志貴とのゆったりとした情景を堪能して下さい。
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酒の上の不埒?
(5202)
(02-08-27 01:31)
乾家にて幻の銘酒を前にしていた志貴と有彦。
そこへ悪酔の状態で帰ってきた、十秒で一升瓶を空ける女、一子。
そして……。
天戯さんに無理を言って強引に頂戴した一子さんSSです。
今回は前編のみで、やりとりの楽しいコメディになってます。
後編は新たに書いていただいておりまして、完結してから読むも良し、
先に前編を読んで、こんないい処でと歯噛みして続きをしばし待つの
も良しです。
*追記
8/26完結しました。志貴がそれはもう……。 (from西奏亭)
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慕姉弟記宇受売章
(5225)
(04-01-24 00:36)
ごく自然に唇の端がクスリと、笑みの形に吊り上がった。
軽やかに舞い続けながらそっと胸元に手をやり、シャツのボタンを一つはず
す。
襟元から覗く肌の白さが、面積を増す。
思ったとおりに視線が胸元に集中するのが分かる。
―― ああ、とても、心地よい。ゾクゾクするほどに。
ゆるやかに、しなやかに有間の目の前で踊り続ける。
その眼があたしを捕らえて離さない。
西奏亭の100万ヒット記念に権兵衛党さんから頂きました。
乾家での一子と志貴。アルコールの力が、二人の顕在化していなか
った姿を露わにしていき……。悶絶させられました。
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Near/Miss
(2124)
(04-01-24 00:29)
適当に引っ掴むと、俺はイチゴさんのいる居間まで戻った。お茶ではまだ温ま
らないのか、寒そうに時折身震いをしている。
「はい、どうぞ。風邪引きますよ、着替えてきたらどうです?」
「今朝洗濯したばっかりだ。まだ乾いてない」
それは流石にどうしようもない。俺は黙ってタオルを手渡した。そうして席
に着こうとしたのだが、イチゴさんはそれを軽い調子で止めた。
「んー、そうだな、ついでだ。有間、髪の毛も拭いてくれないか。あたしは黙
って、お茶で温まってるから」
西奏亭の100万ヒット記念に秋月さんより頂きました。
雨の日の乾家での束の間の情景。志貴と一子の微妙な関係を見事に
描かれておられます。
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十月十日のその前に
(5466)
(05-03-29 00:40)
秋葉の薄い瞼が下りる。それを見届けてから、ゆっくりと顔を近づけていく。
軽く震えた睫毛は、目を開きたがっている表れだろうか。それとも、どうして
もこうなってしまうものなのだろうか。
まだ、解らないことは色々ある。相手の解らない所は沢山あるんだから、そ
れを減らすために、こうしているのかもしれない。
考え事をしている間に、顔と顔との距離は埋まっていく。
秋月さんから西奏亭への頂き物です。
志貴と秋葉のしっとりとしたやり取りが何とも言えません。
■
雨と泥
(1566)
(04-11-02 01:18)
雨脚が強い、昼というのに薄暗い日和だった。屋敷を出ると、泥が跳ねることも構わず、
志貴は足早に木々の中を駆けて行く。時間を惜しんでいるという訳ではない。ただ、傘を
差していないので、反射的にそうしてしまうのだろう。
さるエンド後の志貴と秋葉の姿。
短くも非常に鮮烈に描いています。
秋月さんから西奏亭への頂き物です