□ 握れば指の間より落つ (1652) (04-02-20 13:43)
Fate/stay night>シリアス | 短編読切 言峰綺礼
言峰綺礼シリアスSS。
言峰の生涯、その女、求めたもの。それだけを書きました。その割には長文。
(以下、本文より)
握り締めた手から零れ落ちていく幸福を、ただ必死に掬い上げようと、無様に足掻いては絶望した。何度繰り返しても、それは指の間から零れていく。喉を潤そうとした救いの水は、口に含まれる前に霧消する。
何度も何度も、男はその救いを求めて四肢を動かし、その果てに疲労で動けなくなる。何度も何度も。繰り返し繰り返し、幸福を掴もうと努力した。無様に、無様に、無様に、地に這いつくばって、砂を舐め、岩を食らい、体中が傷ついて立ち上がれなくなろうとも、ただ必死にそれを求めた。